「あなたの自然治癒力をもっと信じてあげて」
これは、私が、解離を含め、心が辛い人に伝えたい言葉です。
解離についてはじめて知って、まだ1ヶ月経つかという頃、
失立失歩(解離による体の立つという機能が使えない状態)で車椅子で診察を受けた時に、
医師から言われた言葉でした。
自分の身に、一体なにが起こっているんだろう。
なかなか良くならない。
一生このままなのかな。
漠然とした「不安」というよりも、絶望に近い感情を抱えていた時、
医師が私にかけてくれた言葉は、その後の私の回復過程でずっと心の軸となり、拠り所になりました。
私には、治す力がある。
私は、元気になれるんだ。
私は絶対、このままずっと、こんな心の状態でいたくない。
私がもらった、最大のエールの言葉。あなたにも届けたいのです。
あなたの自己治癒力を信じてあげて。
体には心には、元に戻ろうと治ろうとする力があるんだよ。
だから、どんなことを言われても、
あなただけは、必ず自分は元気になるんだと自分のことを信じてあげて。

解離との出会い
学生の頃、私の中に、もう一人の人格が現れました。
記憶が抜ける。誰かに入れ替わられる感覚。人格同士がぶつかり合う日々。
診断してくれた医師は、残念ながら解離について治療経験がなく、療養のため私は地元に帰りました。
引っ越しのため転院しなければいけなくなって、
多くの心療内科から治療できないと、言われ路頭に迷いました。
自分の解離については、人格について、隠さないと、診察さえ受けれない。
私は、それでもなんとか元気になりたくて、いろんな書籍を読み漁り、よくなる方法を藁をもつかむ気持ちで探しました。
自分に起きていることを理解したかったし
医者が治せないなら、自分でなんとかしなきゃと焦っていました。
投薬治療で1日に40錠もお薬を飲まないといけない時期があって、
自分の状態はそんなにひどいのか、と絶望したこともあります。
家族には、本心を話せず、自立したくて、パートをしながら一人暮らしをして、
人格たちとなんとか暮らしを回していました。
妊娠を機に状況が変わっていった
結婚・妊娠を機に、産婦人科医と相談して、全ての向精神薬や眠剤をやめました。
すると四六時中ぼーっと霧が頭の中にかかっている感じだったのが
1週間も経たないうちに、そのぼんやりした感覚がなくなりました。
後に血液検査を経て、私には投薬治療が合わないことがわかりました。
これは、私の発達の特性で、お薬に対して過敏であること、
つまり、お薬が通常よりもよく効いてしまう体質であるということでした。
それは副作用が強く出てしまうということでもありました。
出産に向けて、人格たちが出てこない時期がありました。
解離やお薬の影響で、ぼーっとした状態から、クリアになっていく感覚。
1つの命を産むために、自分自身がどんどん母親になっていく。
私はよくなっていると確信し、自分の人格たちが消えてしまったのかな?
と、内心寂しい気持ちもありながら、出産をしました。
痛みや血に過敏で、恐怖を感じる人格がいるので、無痛分娩を選びました。
抑え込むことを、統合だと思っていた時期がありました
結婚してから、しばらく人格の出現が少なくなって、
一人の人格として安定しているように見える時期がありました。
でも本当は、統合していたわけではありませんでした。
人格が出ることを許してもらえない環境の中で、必死に抑え込んでいただけだったんです。
人格たちに後ほど聞くと、
「とうこの心の中で、重くて分厚い鉄板のような岩のような壁があって、出れなかった。」
と話していました。
こういう状況を私は、仮統合状態(医学用語ではない)といっています。
一見統合した状態は、安定しているように周りからは見えたかもしれません。
だけど、私自身は、心は自由でなく、
家族の目を気にして、過呼吸や不安感が強い時期が続きました。
ちょっとでも揺らいだら、指摘される家族関係。
母親として、しっかりしないと。
弱みは絶対見せない。
一人でだって、絶対安定して、立派に子育てしてみせる。
ストレスを見てみぬふりをしながらも
私はその状態に、次第に疑問を感じていきました。
「私は一生こうして、自分の心を押し殺したまま生きるの?」
「我慢して人の目や言葉を気にして、仮面を被ったまま生きていけるの?」
「これじゃあ、今までとなにも変わっていない」
夕方になると、過呼吸と手の震えが出るようになり、私はこのままではダメだと感じ始めました。
その後、状況は変わらないまま、離婚を選びました。
シングルマザーとなり、育児と仕事を両立しながらの新生活。
すると、また人格たちが姿を見せるようになりました。
以前とは違う分かれ方をしていたり、出てこなくなった人格がいたりと
状況は変わっていましたが、どの人格たちも協力的で、本当の意味で安心できる毎日。
心身ともに安定して、私は共存という形が自分にはあっているとその時気がつきました。
「これは、寛解している状態です」と、
医師から言われ、わたしたちは
共存という形で、穏やかに、それぞれが存在するようになりました。
この経験から、一つ、わかったことがあります。
一つにまとまることだけが、良い状態とは限らない。
抑え込むことと、統合することは、まったく別のことなんだ、と。
2018年、相談室を始めました
人格たちの協力を得ながら、解離性障がい専門の相談室を始めました。
その人が一番安心できる形で、回復のゴールを目指す。
Youtubeでの発信を始めると、たくさんの反響がありました。
これまでに、250名以上の当事者の方、そのご家族やパートナーの方のご相談を受けてきました。
「初めて、人格について深く相談できた」
「経験している人だからこそ、話せた」
「自分のような(複雑な)ケースでも理解してもらえるのが嬉しい」
そう言ってもらえることが、続いています。
信じてほしいのは、元々あるあなたの治ろうとする力です
たくさんの方とお話ししてきて、いつも思うことがあります。
多くの人は、自分の中にある力に、気づけていません。
人格たちと、うまくやっていく力。
辛い記憶と、少しずつ距離を取っていく力。
それは、外から与えられるものではなく、もともとその人の中にあるものです。
私がしているのは、その力を、一緒に見つけにいくことだと思っています。
ある方は、最初「人格たちがバラバラで、コントロールできない」と話していました。
話を重ねる中で、その方が
「この子は、こういう時に出てきてくれているんだ」
「この人格は、この感情を私から隠してくれるためにいてくれているんですね」
「何だか最近人格たちと仲良くなれている気がするんです」
「統合がいいか、共存がいいかを話し合っています」
と、ご自身で何度も人格たちと対話し、いろんなことを気づいていかれました。
私が教えたわけではありません。
もともと、その方の中にあった治ろうとする力。
こんがらがった関係の紐を1本1本丁寧に紐解いたからこそ、見つけていったその方だけのゴールや解決法でした。
ここに来て、変わっていくもの
自分を責めることが、少しずつ減っていく。
人格たちを、敵ではなく、味方として見られるようになる。
そして何より、「自分には、もう未来がないんじゃないか」という不安が、薄れていく。
そういう変化を、これまでたくさん見てきました。
答えを急がず、一緒に、あなたの中にある回復する力を見つけていけたらと思っています。
とうこ
→【はじめての方へ/解離ってなに?(現在執筆中)】